安心

 

久しぶりの休日に「よし、それでは。」と柄にもなくキッチンに立ち余り物の食材を使って料理を始めてみる。野菜を丸齧りしてたまにパスタを茹でるだけの生活に嫌気がさし、いや正しくはずっと嫌気はさしているのだけれど、特別見直すようなこともなくダラッと過ごしている。そんな毎日へ「いつだってこうではないですよ」というスタンスを向けキッチンへ立つ。やけに綺麗で広いキッチンに、古ボケたまな板が転がっている。サク、サクとレタスを切ってみるけれど、どちらに向けて切れば綺麗に細く切れるのかもまだ知らない。やたら歯応えのありそうな見た目に仕上がったところで少し水に晒し、水をきったレタスをザッとフライパンへ放り込む。ここから先は説明するのも憚られるが、何かで聞き齧ったような組み合わせの食べ物を切っては放り込み、普段見ることもない調味料たちを目についた順に放り込んでいく。当然満足のいくものができるはずもなく、やたら歯応えのあるコゲたキャベツの炒め物ができた。肝心の味は見た目の倍ほども美味しくない。食材と体力で損の二乗だ。と思いながらも「まぁ体に悪いものが入っているわけではないし」と言い聞かせ口に入れる。箸はやけに重い。でもこれで上手に作れるのなら普段から料理を作っている人に申し訳ないし、普段料理を作らない僕の都合の良い料理は不味くあるべきなのかもしれないな。と思いつつ、仕方なく冷凍庫に入っていた鶏肉を少し焼きワインを飲んでいる。父が休日思い立ったように作ってくれた料理はやけに味が濃くて美味しくなかったことを頭の片隅で思い出していた。もう古ぼけた感情かと思っていたけれど悲しさや後悔があって、そりゃ急に上手くはいかないよな。でももう少し色んなことが思い出したタイミングで上手にできやしないものですかね、頼みますよ、と思っている。こんな感情を整理するための手段である日記もやはり、離れていただけあってスムーズにはいかない。言い表す言葉は オヨヨ でしょうか。